7 バスタ小説「生贄」
第一話
「スベテノハジマリ」
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・・・・・はじまり・・・・すべてはここからはじまる・・・・狂気、絶望・・・そして終焉・・・・・

赤道上空、黒い影二つの影が高速で移動を繰り返す。二つの影はたびたび曲芸を見せるかのように交差を繰り返す。まるで何かの始まりを告げる踊りのように・・・・





薄暗い室内に何か青いものが発光している。みるとそれは何か液体の入った円筒状のガラスケースのようだった。
「なんだあれは?」
俺・・・なのか?もしかしたら私なのかもしれない。とにかくその視点の主である「俺」はそう呟いた。興味を持った「俺」はそのケースに近づくことにした。
「ん?こ、これは・・・・」
ケースに近づきそのケースの中に入っていたそれをみた「俺」は驚く。
「人・・・なのか?」
その中にあるもの・・・それは明らかに「人」の形状をしたものが入っていた。ただそれを「人」と認識させるのに違和感を持つ理由があった。その「人」には管・・と思われるものが何本も突き出ていたからだ。


挿絵寄贈はちゃみさんです
そこには人と認識させるには違和感を感じさせる「管」が刺さっていた

「これはいったい何なんだ・・・」
そう呟いた刹那、背後から別の声がした
「それは、あなた自身よ」
「え?」
そこでテープの切れたビデオ画像のように全てがブラックアウトしていった・・・・



「ん・・・」
まぶたを開けた「俺」の視界には見慣れた天井が見える。
「ゆめ・・・か・・・」
天井をボーっと眺めながら俺はまだ鮮明に覚えている「夢」のことを考えていた。
『それは、あなた自身よ』
どういうことだ?なにかの前触れなのだろうか・・・結構霊感があるからなぁ・・・
そんなことを考えてるとふと先ほどから右腕に圧迫感を感じていることに気がついた。俺はおもむろにそちらのほうを振り向く。
そこには女がこちらを向いて小さな寝息を立てながら眠っていた。
なんだ女か・・・・え?女!
「よ、よ、頼子!」
瞬間的にベッドから飛び出し。情けないことに思わず叫ぶ俺。きっと近所中に聞こえただろう。
「ん〜、うるさい・・・・もうすこしねかしてぇ・・・」
その女・・頼子は寝ぼけ顔炸裂で俺に抗議の声を返した。そして何事も無かったの様に再び寝息を立てる。
もう少し・・じゃねぇ!寝るな!おきろ!
先ほどではないにしろ怒鳴り声を上げる俺。それ対して頼子は多少面倒くさそうなしぐさをしながら上半身を持ち上げた。
「ん・・・・ファワァァァ・・・・ンーーー。あ、達郎・・・おはよ〜ん」
まだ寝ぼけた顔をしながらそれでも今度は達郎・・・俺のことだ・・・を見ながら答える。
「おはよ〜ん・・・・じゃ、ねぇ!なんでお前が俺のベッドで寝てるんだよ!」
俺はちょと取り乱しながら捲くし立てた。
「ナニ言ってるのぉ〜?昨日の熱い夜をもう忘れちゃったの?私なんてまだこのあたりが、ネ☆」
「ネ☆でもねぇ!んなことしてねーだろーが!だ、だ、だ、大体俺たちは姉弟だろうが!何トチ狂ったこと朝っぱらから言ってんだよ」
そう頼子と俺は姉、弟の間柄である。
「フ、フ、フ、フ〜ン。なーにが姉弟なんだか〜。この狼君がぁ」
しらじらしい・・という感じのいたずらっぽい瞳で頼子はこっちを見る。
確かに俺と頼子は姉弟だ。しかしそれは戸籍上だけのこと。実際は血のつながりはない。そのことは俺も頼子も知っているしそれを承知の上で今でも生活をしている。
「な、なんだよ」
まただ・・・何かっつーと『あの時』の事を意味ありげに持ち出しくる。あれを出されると何もいえないことをあいつはよ〜く分かっているんだろう。
「こんな時だけ弟持ち出すのかぃ、クックックッ」
ったく、惚れた弱みと言うか・・・・そう俺はこともあろうか義理とはいえ姉である頼子に惚れちまっている・・・・全く持って生涯最大の失敗だ・・・・だがこればっかりはどーしようもねぇ。半分あきらめている・・・・・ちなみにまだ頼子にその気持ちをはっきりと言ったことは無い・・・まぁ言葉に出さなくても分かることもあると言うか、実際に一度手ぇだしてるし・・・・って、んなことは今はいいんだよ!
「あーあーうるせぇな。大体今日じゃねぇのか?親父達ンとこに行くのは。そろそろ起きねぇとフライトに遅れるぞ」
そういいいながら頼子に目覚し時計を投げつける。
「あ、いっけなーい。もうこんな時間。そろそろ起きなきゃ。達郎、支度なさいよ」
そそくさとベッドを降りると自分の部屋に向かっていった。
「それは、俺のセリフだ」


キッチンにて


「実際なんで俺の部屋で寝てたんだ?」
俺が作ったサラダとスクランブルエッグをのせた皿を頼子に渡しながら俺は再び尋ねた。
「んー?ちょっと寝付けなくてあんたの処に潜り込んでみたらそのまんま寝ちゃったみたい。ところで達郎」
スクランブルエッグをパクつきながら俺を呼ぶ
「なんだ?」
「私の寝てる間に何もしなかったでしょうね」
ブ!
「お前が寝てるのに気が付いたのはついさっきだ!大体そう思うんなら人の布団に潜り込むなよ」
なんつーこと言うんだこの女は。
「そーよねえ、寝こみを襲うなんて男のすることじゃないわよねぇ」
自分で潜り込んどいてナニ言ってんだか。
「姉としてもそんな弟に育てた覚えないし」
いつお前に育てられたっつーの
「くっだらねぇ事言ってないでさっさと喰え」
「達郎は?」
「もう喰った」
「相変わらず早いわね。食べることに関しては」
意味深な言い方をする。
「なんだそれは?」
「言葉そのまんま。食べるの早いわねってこと。ご飯も女の子も」
こ、このアマ。
「あ、怒った?図星?クスクス」
「だから早く喰え!もう時間ねぇっつってるだろが!」
「ハイハイ」


羽田新国際空港


「う―――ン。また道に迷ってしまったゾ?困った・・・・・」
ドン!
「フ○ーック!!」
ん?なんだ?
「オイ!!オマエその怪しげなキカイな!!あんまアテにしない方がいいんじゃないかァァ!!」
あーン?アヤシゲぇぇ?
「うるさい!!電子工学をバカにするな。これのドコが怪しいんだ!!!」
「だってオマエ、もォ4時間も空港の中をぐるぐるぐるぐる・・・」
ったく、ガタガタガタガタと。
「うるさい!!主に向かってオマエとは何だ!!ブレイ者!!!ケツを犬に喰わせるゾ!!!」
そう、このクチの悪いデカブツは私の従者なわけ。
あ、自己紹介まだだったわね私の名前はディータ=ダークス
『誰に話し掛けてるんダヨ?』
ウルサイ!少し黙ってナ。あ、失礼♪華も恥らう16歳よん。
『華も散り逝くの間違いじゃないのォ?』
えぇーぃ!少しだっまっとれ(ドカバキ!)
『ハゥ』
(パン、パン、パン)で、さっきからウッサい似非エディー某なこいつがデヴィン。そして
「あーお嬢様ケンカはダメなのネ」
デカイ体のわりに気が小さそうなこいつがラヴリエー。私たち3人は4時間ほど前にドイツからここに到着したわけ。
さて、なんで私たちがこんなところをウロウロしてるかと言うと・・・・なんだっけ?
「ディータお嬢様、ひょっとすると我々の『探し物』の手掛かりがこの空港内にあるとゆー事かもしれないのネー」
あ!(Pon!)
「なるほど!」
・・・・ラブリエーの言うとおり『探し物』をしているわけよ。すっかり目的忘れるところだったわ。それにしても
「6歳で秘儀参入を果たした『欧州の超魔女っ子』とまでいわれるこの高位カバリスト『ディータ=ダークス』の電子神秘学をして生み出した数霊術と霊智と東洋の易占の結晶、『電子易算機』が狂っているとはとーてー考えられなィな!」
ウン、決まった。そーよ間違いがあるわけないのよ!と、思ったがデヴィンのやつは気に食わない顔をしている。あによー。
「お言葉ですがご主人様ね、その『易算機』の『お告げ』のせーで私ら独(ドイツ)地球の反対側を周って来ちゃったンですぜェ?せっかくの券キャンセルして半日も早く家を出てだ・・・」
カチン!
「本当だったらホラ、もうすぐ着陸する便でのんびり来られたんだ」
ブチ!
「(こんの・・)ダマレ!易算機がダメって言ったらダメなんだ!!!!」
ブチぎれたあたしはこのうすらボケ(デヴィン)に捲くし立てる。
「この電子易算機は電話回線で中央とリンクさせれば数時間以内のことなら50%の確率でほぼ確実に『予知』出来るんだ!」
だからダマッとれ。
「・・・ッデム!!!当るッたって50%じゃ結局・・・『当るも八卦当らぬも八卦』ぢゃね―かーっ!!」
・・・うっさいわねぇ
ブルルルルルルルルル
ん?
「『デジタル霊子計』が・・・」
震えてる。霊体をキャッチした?どのくらいの・・・・・え?
「う、嘘!霊子質量160,000,000以上〜!?」
こ、故障かな。
あたしはとっさに従者の二人をみる。何故か?この二人、実は使い魔。今は人間の姿に魔力でトランスフォームしているわけ。で、
「こんな・・・魔導災害並みの霊濃度下でこのコ達が・・・この姿を維持できるハズないし・・・」
そう、こんな魔力どう考えても非現実的数値。やはり故障?・・・・ん?
「ウソ!?でも霊圧が0だわ!!」
ってことわ・・・
「どうかしたのネ?ディータお嬢様」
ラヴリエーが心配そうに話し掛けているがいまはそんなところではない。
『多重結界に封印された高密度霊体』
それしか考えられない。そしてそれを指し示す霊的属性は・・・混沌(カオス)!?
つまり
「―――アダム1」
私はその霊波を特定しようと神経を集中する・・・・いた、私の真後ろ・・・・・あの若い男女のうちの背の高い方「・・・・アレね・・・」


ディータが見つめるその先には上座頼子/達郎姉弟の姿があった・・・・


ほんの数分前同新国際空港


頼子は冬休みを利用して親父とお袋のTELコールでエジプトの発掘現場へ10日ほど手伝い行くことになっていた。考古学を専攻しようとしていている頼子には良い勉強になるらしい・・・と言うのは本人の弁だ。
『達郎も一緒に行く?』
俺も誘われた(と言うか親父たちには『お前も来い』と言われていた)が考古学なんつー穴掘りに一切興味の無い俺はわざわざクソ熱いところに行く理由が見つからなかったのでトーゼン断った。
『10日か・・・・』
ロビーを歩きながらふとそんなことを考えていた。10日・・・たかが10日、されど10日だ・・・
「ムクれてんの?」
柱によかかってまだ尚同じ事をボーっと考えてた俺に頼子が呼びかけてきた。
「これから冬休みだってのに・・・」
・・ったくよりによって23日に行くことはねぇだろ。明日だぜ明日。
「親父たちのやってる発掘(けんきゅう)なんてほっとけばいいんだよ」
親父たちの研究。俺にはさっぱり判らないが頼子の言うには『魂の碑文堰』に関するものらしい。
「普段、ロクに帰ってもきやしないクセに。大体頼子が行ったって何が出来るんだよ」
「・・・達郎だけ行くより良いわよ・・・それに私『考古学』とるつもりだもん」
その喋る姿には弟を諭す「姉」の香りを感じる。朝のようなボケボケ女の姿は無い。もっとも朝みたいな方が実際めずらしい。
「アンタはもうじき高3なんだから。成績良いのは知っているけど今回は・・・」
諦めたかと思ったがまだ俺を連れて行く気だったらしい。
「別にオレは行きたか無いね!」
「ふふ」
ぶっきらぼうに返答した俺をみて頼子は微笑む。
「!・・・・な、何だヨ」
「アンタ・・・・・」
ズイっと顔を近づけ、そして
「本当は私と離れたくないんでしょ・・・?」
ギク!
「な、な・・・ち、違!」
自分でもはっきりわかるほどの明らかな動揺。完全に見透かされてた。思わず顔をそらして目線を外す。
「こっち向くの」
顔をそらせていた俺の顔を両の手で抑えて無理矢理正面を向かせる。
「ちゃんと食べんのよ・・・」
「分かってる俺の方が頼子より料理うまいだろ・・・」
「ウソいいなさいよ。私の方が上手いわよ・・・」
そう言いながら俺のあごに人差し指を軽く乗せた。
「それと・・・他の家の子とケンカしないコト★ タバコの火、気をつけるコト!」
子供か俺わ
「あぁ・・・」
今度は気の無い返事でロビーの外を眺める。
しばしの沈黙
「・・・・頼子・・・・」
「ん?なぁに?」
「―――――ほんとにいくの・・・か・・・?」
ポツリと、そう自分でも不思議なくらい自然に言葉が出た。
言葉が帰って来ない。俺はそっぽを向いていて頼子がどんな表情をしているのか分からなかった。そしてしばらくして、
「バカね。ほんの・・・10日間じゃないの・・・」
「すぐに帰って来るのよ・・・」
頼子の表情を見る。少し瞳が潤んでいるようだ
「・・・」
言葉が返せない。
「―――――――やっぱり・・しんぱいだな・・・」
「行くの・・・やめよっかな・・・」
言葉を重ねるたびにうつむき加減の頼子は辛い表情になっていく
「たつろう・・・」
ジャンパーに顔をうずめながら俺の名を呼ぶ。
「ん・・・」
「・・・達郎が決めて・・・」
「え・・・」
「達郎の言うとおりにする・・・」
「・・・」
「そういえばイブ・・・明日だったもんね」
そう言うと上目使いの表情で俺の返答を待った。
『・・・・・・』
ドキン、ドキン。う、そんな目で見るなよ・・・
俺の思考はその瞳の魔力に魅入られたように麻痺していく。
そしてその瞳に吸い込まれるように俺は自分の唇を頼子の唇へと・・・・・・


「たつろぉ〜!」
ドキー!
ロビー全体にこだまする甲高い声、こ、この声は


「より姉―――」
やっぱり・・・。
声の方を向くと金髪で褐色の明らかに女子高生な女がこちらに走って向かってくる。
『チッ・・・見神』
熾堂見神・・・いわゆる幼馴染って言う奴でここ10年来の腐れ縁だ・・・出会いは・・・ん?そんなこといちいち覚えてねぇな。
「見神!!来てくれたの?」
ったく、相変わらず間の悪い女だ
「良かった―――っ間に合って・・・たつろーはへーきで学校さぼっちゃうんだから・・・」
結構走ったのだろう。息が多少切れてハァハァ言っている。しっかし・・・・
「おい、みかん。オマエははしると・・・」
何もな・・・とそこまで言いかけた瞬間
スッテン!
あ・・・
ドカ!!
ッッッッッ・・・・ホラ来たッ!
なにも無いところでいきなり転んで俺に頭突きをくらわす。
「・・・・っったく!オマエははずかしーラブコメ体質なんだから!」
ラブコメ体質。まさに『不治の病』といってもいい体質は『1:出てくるタイミング(間)がわるい』『2:何も無いところでよく転ぶ』『3:すぐに劇的トラブルに巻き込まれる』等はたからは迷惑極まりないものだ。見神はその習性を見事間にまで持った真性ラブコメ体質と言っていい。いつも気をつけろと言っているのにしょうがないヤツだ。
「ごめん・・・」
見神はぶつけた額をなでながら俺に謝る・・・・その刹那


ディータの持つ易算機が『お告げ』を発し、それと同時にディータ達が乗ってくるはずだったジャンボがロビーに向かって突っ込んでくる。
その瞬間から平和で甘ったるいこの場は阿鼻叫喚の地獄へと変化を遂げた。
泣き叫ぶ客の声。うめき声も聞こえる・・・・・・その中、上座達郎は下敷きになっていた頼子を抱きかかえつつある方向を見つめていた。
その先にあるもの・・・・巨大な白い羽を持った巨人・・・・・架空の物語でしかしらないそれが目の前にあった・・・1999年・・・・西暦は終わりを告げそして・・・

予言戦争――――――――勃発

Writing finish 2000/4/16