7 バスタ小説「生贄」第六話「カウントダウン」B-Part
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「おーい、早く、早くぅ」

見神が大きく右腕を振りながら俺と頼子を呼ぶ。


某大社


「ホント、見神はいっつも元気よね」

そんな見神の様子のみながら頼子はそんな言葉をうれしそうに漏らす。

熾堂見神、ロシア系クォータである彼女とはもう早いもので10年来の付き合いである。
見神の両親は貿易会社を経営しており俺達の両親同様留守がちだった為、うちに遊びに来ることが多かった。
そう言うこともあった為だろうか頼子は見神を妹のように可愛がっている。恐らく『ように』では無く彼女にとっても『妹』そのものだろう。

「元気っつーより喧しいだけだろ」

俺は頼子のその言葉に対して悪態をついた。

「またぁ、そんな事ばっか言って・・・ところでさぁ達郎」
「ん?なんだ?」
「あんたさ、実際のところ見神の事、どう思っているの?」
「それはどーゆー・・・」
「例えば見神の事を異性として意識しているとか・・・」


ぶっ!


「い、いきなり何言いんだすだよ」
「だって、見神って女の私から見ても綺麗だし、可愛いと思うもの。どうなの?」

ふぅ、なーんで、んなこと聞くかなぁ。

「ったく。ねぇよそんなもの」
「ほんとかなぁ〜?」
「何疑ってんだよ。大体、なんでんな事気になるんだよ」

そう、俺は頼子を姉としてではなく異性として意識しているしそのことは昨日当の本人に伝えた。それで良いじゃないのか?

「ん?ん〜・・・・別にぃ。それならそれでいいわ」
「??????」

なんだそれわ?とは思ったがちょうど見神に追いついた為これ以上追求しなかった。



「ねぇ?たつろー、頼姉、さっきなに話してたの?」

神社の境内に入ると流石正月、人の山になっている。何時もはこんなところに来もしないくせにこう言う時だけ・・・とウンザリする人の波にもまれながら考えていると見神が先ほどの件について聞いてくる。

「別にぃ。いつものくっだんねぇ話だよ」

まさかお前についての話題だったとは言えず、俺は適当にお茶を濁す。

「そう?なんか妙にたつろーが焦ってた様に見えたから。またなにか頼姉に弱みでも握られたのかと思ってね。ねぇ頼姉、本当のところはどうなのぉ?」

いつはのほほ〜んとしている見神だがこう言う事に関してはこと俺の事に関しては妙に観察力がある。

「見神は可愛いねって話をしてをしてたのよ」

当たらずも遠からず、頼子はさらっと妥当かつ曖昧極まりない回答を返す。

「へへへへへへ・・・・」

そういわれてまんざらでもないのか照れている様子だ。単純なやつ。



『例えば見神の事を異性といて意識しているとか』



先ほど頼子に言われたことを思い出し、隣に並んでいる見神を見る。

確かに客観的に観察した時、見神は美形の部類に入るな、と思う。
よく『ねぇねぇたつろー、またこんなにもらっちゃった!』とか言いながら山のようなラブレターを見せられる所から、モテるのも事実だ。
・・・が、やっぱり俺からみればやはりちょっと(いやかなり)ドジな妹という意識以外沸かない。血の繋がっていない姉と妹のような幼馴染、俺は知らないうちにこの二者択一の選択肢を決定していたようだ。
だから・・・もし頼子が本当の姉だったら・・・見神を選んでいたのかも知れないな・・・・・



バコ!




そんな事をボーっと考えていた俺の後頭部にいきなり軽い衝撃が走った。

「い、イッテェ!誰だ!いきなり殴りやがった奴は!」

殴った当人を探すように後ろを振り向く。その先には

「こんにちわ、達郎!」

そこには手をひらひらさせながら何事も無かったように挨拶をする女・・・宇土留美子の姿があった。隣にはフィアンセの呂風の姿もある。

「オメーか、正月早々人の頭殴りつけるクソアマは!」
「あ〜ら、私は正月早々可愛らしい少女に狼の目つきをしているヘンタイ同級生を犯罪に走る前に正気に戻しただけですわ。」
「だーれがヘンタイだ」
「アナタ」

躊躇することなく俺に対してビシッと指差す宇土。犯したろか!

「留美子さん、言い過ぎですよ。」

そこへ呂風が静止に入る。

「は〜い」

急に、俺に吐いていた毒舌家の女王様とは思えない猫なで声が出てくる。
フィアンセである呂風に対しては完全に「借りてきた猫」になってしまう。
ど〜すればあそこまで手名ずけれられるものなのだろうかと感心してしまう。

「達郎、明けましておめでとう。今年もよろしく」

こっちを向き直った四四也は新年の挨拶をしてくる。

「おぅ。ヨロシク」

俺も反射的に挨拶を返す。
生徒会長である俺と学級委員長である四四也とは学園のことで結構話をしたりする。四四也は、いわゆる「好青年」と言う奴でまるで俺と逆の性格だったりするわけだが何故か不思議な事にこいつとはウマが会った。
なんでこんな奴が留美子みたいな性悪女の彼氏なのかなり不思議な所だ。そんな訳で以前四四也にズバリ聞いた事があった。
すると四四也は
「留美子さんですか?ちょっと性格がきつそうに見えますけど、本当は寂しがり屋で可愛いところもありますよ」
とニコニコ笑いながら答えた。
そのときは「ふ〜ん、そんなもんかねぇ」と話を終わらせたが、今だ理解出来ないところではある。

「達郎、この人たちは?あんたの友達?」

横からひょいっと顔を出してきた頼子がおれに尋ねてくる。

「あぁ俺のクラスの同級生で宇土留美子と呂風四四也だよ」
「宇土・・・・え?もしかしてあの日本屈指の巨大企業体宇土グループの?あんたの学園にそのお嬢さんが通っているって聞いた事あったけどまさか同じクラスだったとわねぇ。始めまして、私、達郎の姉で頼子といいます。いつもこの馬鹿弟がご迷惑おかけしてます」
「こちらこそはじめまして。いつも達郎君には良くして頂いてます。」

さすがお嬢様、社交事例は心得ている。

「おっと、それとさっきお前が俺を殴りつける原因になったこいつが熾堂見神。まぁいわゆる『幼馴染』ってやつだな」
「はじめましてぇ」


偶然なのか意図的なのか出くわせてしまった俺達はそのまま一緒に行動する事となった。と言ってもこの人ごみの中では移動するのも困難な訳なのだが。


「ところでさ留美子ちゃん、四四也君とはどーゆー関係なの?」

出会ってから30分ほど経過した所で頼子はそんな話題を振った。
ちなみにその間女性陣3人は俺と四四也の前でずーっとしゃべっている。『三人寄らば姦しい』とは良く言ったものだ。

「え?えぇ〜っと・・・ちょっと恥ずかしいんですけど四四也とは許婚なんです」

何時も公言してはばからないのに何を照れてるんだか

「えぇ!許婚同士なのぉ?いいなぁうらやましいなぁ」

それを聞いた見神は露骨にうらやましいそうな声を出す。

「そーゆー見神だって達郎と良い仲なんじゃないのぉ?」

その言葉を聞いた見神はビクッとしたように見えた。後ろの俺にはその時どういう表情をしていたかは分からなかったが。
見神の表情を少し見ていた留美子は急にこっち方を見る。その表情は好奇心旺盛な子悪魔そのものだった。

「達郎はどーなのよ」

ニヤっとした表情で不意にろくでも無いことを聞いてくる。頼子もその言葉に反応してか俺のほうを向いている。見神は前を見たままだ。

「べ、べつに・・俺は見神の事は手のかかる妹ぐらいしか見てねぇよ」
「あ、そうなの」

俺の問いに「へぇ〜」と言いながらかなり懐疑的な顔をする留美子。
俺の答えに対して見神は表情が見えなかったが数秒間をおいて何時もの声で
「そーなの、達郎とはちっちゃいころからの『くされ縁』ってやつなんだ。そんだけだよ」
とケラケラした口調で話し始めた。
留美子はそれ以上その事に付いては一切振れず別の話題について色々話し続けた。

やはり俺のことを好きなのだろうか?そんな事を考えたが、そんな事を本人に問いただすわけにも行かないし俺は頼子が好きである以上、これ以上余計な詮索をするわけにも行かない。それとは別に今までの見神の関係を崩れてしまうのを恐れていたと言うのもあるだろう・・・どちらにしろ放っておくしかないんだ、今は。

「どうしたんだ?さっきから黙って?」

隣にいた四四也は急に神妙になってしまった俺が心配なのか声をかけてくる。

「あ、いや・・・なんでもない」
「そう?それなら良いんだけれど」
「それにしても・・・あれ?留美子達はどこに行った?」
「あ、それなら前の方ですよ」

どうやら考え事をしている間に、間を開けてしまったらしい。彼女達の前にはすでに2,3列の人間の壁が出来あがっている。

「悪いな。なんか付き合わせちまったみたいだ」
「いいですよ。別に。ところで達郎、ぶしつけな事を聞いて悪いんですけれど」
「ん?なんだ?」
「留美子さんに聞いたのだけれど君がアダム1らしいね」

そうか、あいつの婚約者だからな。それぐらいはすでに知っているか。

「あぁ・・・。ディータの言うにはそう言う事らしい」
「で、この計画の手伝いを承諾したのですか?」
「いや、実際決め兼ねている。昨日突然言われて『はい、そうですか』と言えるほど物分りが良い方じゃないからな」
「当然ですね。ただ僕が言うのもなんですが、達郎は達郎とその周りの人の事だけを考えれ良いんじゃないかと思っています。世界の命運や革新なんて、一人で背負い込むものじゃないですからね」

それは暗に『断ってしまえ』と言っている様に聞こえる。やはりたどり着く答えはこいつも同意見だったようだ。それともなにか直接には言えない『なにかが』あるのかもしれないか・・・・どちらにしろ四四也の言葉はうれしかった。

「お前・・・本当にいいやつだな」
「そうですか?ハハハハハハハ」


ガランガラン


境内に響く鐘の音


パン・パン


そして願いを込めるかのように叩かれる両の手。
留美子達と合流してから小一時間、やっとのことで賽銭の投げられる所まで到達した。
大きな神社での初詣と言う事で巨大な賽銭スペースの前までで実際に鐘は振れないのだが定期的に振られる鐘の音に合わせて俺達はお参りを済ませた。

「さて、これからどうしましょうか?」

やっと人ごみから抜け出し一息ついたところで頼子が皆に言う。

「あ、それなら新宿においしいケーキを出してくれる喫茶店見つけたんですけれどそこ行きません?」

とっさに留美子が提案。
また、わざわざ人ごみが激しいところに行くのはかなり抵抗があったが、女性陣の『行くの!』攻撃にあえなく却下された。



新宿東口ALTA前



予想通り人でごった返していた。
平日ですらかなりの人で賑わうこの街だ。今日みたいな日はまさに『人の波』で街は埋め尽くされていた。この分だとその『喫茶店』とやらも人であふれているのだろう。

「さて、行きしょうか」
「えぇ、行きましょう」
「ケーキ♪ケーキ♪」

そんな状況に全く意を介さない宇土留美子、以下女性二人。美味しいもの前にはすべての困難は困難では無いのだろう。
そんな彼女らに俺と四四也はお互いに苦笑いをするしかなかった。










そんな、何気ない平和な瞬間、永遠に続くかと思われたその風景、それが当たり前だと思っていた今まで・・・・・・・・・・・








でも、すべてが変わる・・・・・・・・・すべてが終わる・・・・・・・・・いや、始まりの瞬間・・・・・・・・・・








俺は何気にアルタの大型ディスプレイに目をやった。
ちょうどお昼時らしく、正午のニュース・・・・いや、上の方には「緊急特番」と書かれた字幕が見える。

何か事故か?

俺はしばらくその画面を見つめていた。スピーカーから発せられている音はかき消されてしまい良くは聞こえていない。
頼子達も俺その姿に何事かとディスプレイを見つづけた。
そして、しばらくすると何か異様な物体が画面に現れる。それは荒野のど真ん中に巨大な異物がうつる映るそれは異様な光景だった。

あ・・・あれは・・・・

見覚えがあった、あれはそう、昨日ディータに見せられたアレだった・・・・そいつの名は



「・・・・アンスラサクス、どうして・・・・」



代わりにその物体の正体を留美子がつぶやく。




トュルルルルルルルル




その時俺の携帯がけたたましく鳴り響いた。
画面を見ると見なれないTEL番号が表示されている

Pi!

俺は携帯を取る。

「もしもし?」
「達郎か!私だ、ディータ=ダークスだ」

その時、俺の中で時はゼロに向かって刻み出した。




なまにえの呪文:
永らくおまたせいたしました。第6話Bパートやっとお届けいたします。
Aパートから実質一ヶ月経過して「打切りか?」と思われた方もさぞいらっしゃる事でしょう。本当に申し訳ありませんでした。
今回ここまで遅れた原因はさまざまな時間的要因な所もありますがやはり「言葉が出なかった」と言うのが実際のところです。やっぱ理系人間が文系まがいの事をやろうとするとすぐにここいらの壁にぶつかってしまいます。まぁ文系理系と騒ぐ以前の事じゃないかと言う話もありますが(笑)
そいうことで今後も結構スケジュール通りには行かなくなると思います。出来れば10日に一回はアップしていきたいのですが・・・・・今後もよろしくお願いいたします。
さて、言い訳はこんなところにして今回のパートのフォローなんぞ。
一応見神に関してはあやふやではありますが「妹としか」見ていないと言う事で完了させてしまいました。ひでぇ話ではありますが三角関係がメインの話じゃないんでご勘弁頂けたらいいなぁ。出来ればもうちっとこのあたりをきちんと書きたい気持ちはありますが・・・・書くと切り無いからやめよ(ぉぃ)
#ラブひな的な三角関係で書ければベストなんですがやっぱプロの作家さんたちは偉大だ(尊敬)
あと、パートの最後でいきなりシリアスに持ってきています。強引なのは百も承知なんですが、でもある意味こう言う『突然世界が切り替わる』という描写もアリじゃないかと都合良く自己納得しています。書いていて「なんかこの描写って夢オチみてぇだなぁ」とか思ったんですがそれは秘密です(笑)
そう言うわけでこのパートを区切りにこの物語はシリアス路線まっしぐらです。もう多分ラブコメやギャグには帰らないでしょう・・・・というよりなんでラブコメやらギャグがいままであったんだ?(爆
次回は・・・ちょっと何時かは確約できませんが今月中にはなんとか・・・と思っています。それでわ

Writing finish 2000/10/09