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バスタ小説「生贄」第七話「 」B-Part
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2000年1月1日にその姿をあらわした「システムA」。美と醜が同居したその姿に世界中の人々が驚愕し少なからず混乱を見せた。
しかしあれから既に2ヶ月経とうとしている現在、「非核兵器による絶対抑止力」と「環境復活プログラムの中核」と言う平和を前面にプッシュした国連の宣伝効果は人々から混乱や恐怖を抜き去り逆に期待と歓迎をもたらすに至った。
システムAは「環境データの自己収集」を名目に世界を『巡礼』して回っている。
そして巡礼が終わり次第環境復活プログラムを開始すると言うのが国連より発表されたタイムスケジュールとなっている。



AM07:30

「・・・・・・・・・たつろー・・・・・・」

頼子の声が聞える。

「ねぇたつろーってば・・・・」

もう少し寝かしてくれぇ・・・昨日だって遅かったんだし


「おきろー!」


うわっ!

「ハァハァハァ・・・耳元で大声出すな・・・・心臓止まるとこだったじゃねぇか」
「ふん、あんたが起きないからよ」
「もうちっと起こし方っつーもんがあるだろーが。例えば『お目覚めのキッス』とか」
「・・・・そう言うからこの間やってあげたじゃない・・・・そうしたら・・・・・

あぁそう言えばあの時は起きたには起きたがそのまま・・・・で、結局遅くなってしまったんだっけ

「だから今日はこうさせていただきました」

例の『この間』を思い浮かべてたらしくちょっと紅潮している。うーん、こういう頼子も可愛いな。

「ところで今何時・・・・・ゲ!まだ7時半じゃんか。もう少し寝かせろよ」
「なぁーに、いってんのよ。今日の約束忘れたの?!」

ん?今日の約束・・・・・あぁそう言えば

「今日は『ニャムコワンニャーワールド』に行くって『約束』!」




巡礼・・・・表向きでしかないその行動の真の目的は近い未来に起こる「終末戦争」に対抗しうるための各種データの蓄積である。
『彼奴』が現れる為にもっとも安定した空間ポイント「ラグランジェポイント」の特定、戦術戦略レベルでの判断を行うための基礎データの収集・・・・EtcEtc・・・・。
そして現在南アメリカ奥地では戦闘準備・・・つまり自分の手足となる兵隊を生み出している・・・静かに、しかし確実に。




AM11:15

あ、そこ、あー

・・・・・・・・・・・・・

右!右!あ、こんどは左〜

・・・・・・・・・・・・・

そこでアッパー!やったー

・・・・・・・・・をぃ

「よりこ」
「ん?」
「お前はしゃぎ過ぎ」
「え?なんで?」
「まわり見ろよ、まわり」


ニャムコワンダーランド、通称ニャンワ。娯楽産業企業の一つ「ニャムコ」が運営しているアミューズメントパークである。TDLの様な大型アトラクションは無いが小粒で味のあるアトラクションと都市郊内に設営されていて気軽に遊びに行けることもあって人気が高い。
今日は頼子と一緒にこのニャンワで一日をすごしている。今は実際に体を動かすことによりキャラクターを操作する格闘ゲーム『鉄観音3』をプレイ中だった。
頼子は俺の言葉通りクルっと回って自分の周りをみる。
いつのまにか人の輪が出来ていたのだ。

「わかった?恥ずかしいだろが」
「え〜、別にいいじゃない。そもそも人が集まっているのは私のせいじゃなくて、達郎がすごいからでしょ?」

頼子の言う事も一理あった。俺は既にいくつものステージをクリアして今まさにラストステージに入るところ。

「だーかーらー。余計気になるんだろが。少しは人の目も気にしろよ。今日の頼子なんか変だぞ?」
「そう?いいじゃん、今日はなんかそんな気分なの」

やっぱり少し変だな。そう言えば朝、一緒に行こうと見神を誘ったときのあいつも少し変だったな。



「あー・・・・たつろう、頼姉、ゴメーン。今日はちょっと用事があってダメなんだぁ」

両手をポンと叩いてごめんなさいポーズをとる見神。

「用事って・・前から行くって行ってただろ?」
「エ?そうだっけ?わすれてたよー。」
「わすれてただぁ?」
「まぁまぁ・・・みかんに用事あるって言っているんだからしょうがないじゃない。みかん、また今度一緒に行こうね」
「え?・・・あ・・うん!」


なにか様子がおかしい・・・か?

「じゃぁね、達郎!行くわよ」
「あ、あぁ・・・。じゃぁな見神」
「じゃねぇ〜。たつろ」

うーん、気のせいか・・・
俺は右手を軽くあげると背を向けて歩きだした。























・・・・・・・・・・・さよな・・ら・・・・・・・


















え?

なんとなくだか不意に聞えた声に思わず振りかえる。
そこには見神の姿はもう無かった。

気の・・・せい・・・なのか?それとも




「達郎!」

頼子の声に我に返る。

「な・・なんだ?」
「何って・・・ラストステージはじまるゾ」

画面をみると既に戦闘開始デモが始まっている。

「シャキッとして!負けちゃダメだからね」
「オゥ!任せとけって」

気をとりなおし、俺はグィっと親指を立てて頼子の応援に答えた。




一見何事もない様に見える日々。しかし兆候は目に見えるところで現れていた。
『ついに宇宙人襲来か!?』
このようなバラエティ番組のタイトルが番組欄を賑わすようになったのは今にはじまった事ではない。だが、それらの番組が急に多くなり「証拠写真」と言われる白い物体が映るさまざまな写真が撮られるようになったのはここ数ヶ月の事だ。
また、原因不明の傷害事件が多発している。被害者は一様に「と、鳥のような羽根を生やしていたんだあれは人間じゃない・・・」と証言する。しかし警察は「一時的なパニック」として取りあうことはない。
異世界の住人「天使」が地上に現れ始めた事実。しかし、人々はそれを面白おかしく報じ評するだけ。何も知らないと同じなのだ。終末はもうすぐそこまで来ているというのに。





PM03:30

「あー、楽しかったぁ」
「俺は疲れた」

あれからニャンワのありとあらゆるアトラクションを楽しんだ・・・というか頼子に引きずりまわされた感じだ。
かと言って言葉ほど疲れているわけじゃない。ただの愚痴だ。
ちなみに『鉄観音3』は無事クリアーして盛大な拍手を周囲からもらっている。

「えぇ〜!楽しかったじゃなーい」

まだまだバイタリティが有り余っているご様子。

「昼飯も食わないで5時間ぶっとーしだぜ」
「5時間ぐらいでブツブツ言わない」

5時間だったらブツブツいう権利はあるはずだ

「まったく、スタミナ無いなぁ。」

ここまで言われるようではもう何言っても何か言い返されるのが関の山だな。
それに本当に疲れていると思われていても尺に触る。

「んなことねぇよ。なんだ次はどこ行くんだ」

その言葉にフフフと笑う頼子。げ、見事に策にのってしまったのか。

「うーーーーん」

頼子しばらく悩んだ風を見せた後、こう答えた。

「海、見に行こ?」




知るにしろ知らないにしろ、この「決められた未来」を変える事は出来ない。
システムAあるいはまだ見ぬDによる応戦が仮に有効なものであっても地球上の多くの生命が壊滅状態になるのは間違い無い。
それを考えれば審判が下るその瞬間まで何も知らないほうがもしかしたら幸せなのかもしれない。この未来は選択ではなく強要されるものなのだから。
例えば、そう・・・・・





PM04:00

「一つ聞いて良い?」

ニャンワから歩いて20分ほどにある海岸公園。有名なデートスポットではあるが3月に入ったばかりで寒さがキツイせいだろうか人はまばらだ。
頼子は俺の前をのんびりとした歩調で沿道を歩いている。

「んー、なんだぁ?」
「最近、あんた私に隠し事してない?」

ギク

「ここんところ頻繁に帰り遅いし。喧嘩だって言ってるけどこの間まで喧嘩してきてもほぼ無傷だったあんたが急に生傷絶えなくなってるし」

背中を向けたまま問い詰める。
妙に感の良いこいつが何も言わないのはおかしいとは思っていたがやっぱり気づいたようだ。

「べ、別に何も隠してねぇよ」

不意をつかれたせいか、情けないぐらい動揺が声にでてしまう。

「うそ、おっしゃい」

軽く横を向く。振りかえりは無い
返す言葉が見つからない

・・・・・・・

しばしの沈黙の後、

「・・・・ま、良いわ。今はこれ以上は聞かない。でもね、いつかは教えてね」

それだけ言うとまた正面を向いて歩き出す。

「・・・ぁぁ」

いつか・・・か。




しばらく何も話さないままぶらぶらと散歩を続ける。






「ねぇたつろ」

ふいに歩みを止めると頼子は今度はクルっとこちらを振りかえり、語りかける。

「ん。なんだ?」



「私の事、好き?」



「な、なんだよいきなりよ」

問い詰めたかと思えばこんどは別の話。やっぱり、今日は変だ

「別にいいじゃん。好き?」
「べ、別に今更あらたまって言う事じゃ・・・」
「私はたつろーの事が大好きよ。世界中の誰よりも」

そう言いながら俺のところにゆっくり近づいてくる。

「・・・・・・・弟として?」

つい天の邪鬼になってしまう。分かっているのに。
俺の目の前まできた頼子は少しムッとした表情を見せたがすぐに真顔になる。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・バカ」

それだけ言うと両手を首の後ろにまわし少し顔を引きこむように俺の唇に自分の唇を軽く重ねた。

「今度いったら殴るからね」

唇を話した後、小さく、囁くように。

「・・・・ごめん」
「で、達郎の答えは?」
「愛している・・・世界中の誰よりもだ」

それだけ言うと今度は俺が片腕で頼子を引き寄せ強く唇を重ねた。






「そろそろ帰ろっか」

揺らぐ髪を抑える頼子。
さっきより風が強くなってきたようだ。

「あぁ・・・そうだな」




後に上座頼子は宇土留美子にこう告白している。
『あの子にも言われたけどあの日は本当におかしかった。目覚めたときから強い動悸がして止まらない。不自然なぐらい陽気に振舞ったけど漠然とした不安が膨らむばかりだった。とにかく達郎のそばにいたかった。場所を、時間を共有したかった。何もかも求めたくて仕方が無かった。安心が欲しかったのよ・・・・』
うなだれながら絞る様に呟いていたと宇土の娘は語っていた。





PM05:10

背後に視線を感じる・・・

振りかえる・・・・が、誰もいない。

しばらくするとまた感じる視線・・・誰だ・・・天使野郎か?
それにしては、いつもとは違う感覚だ。

「さっきからなにキョロキョロと挙動不信に陥ってるの」

明らかに不信な行動をとっている俺に対して声を掛ける。

「あ。いや、どうも誰かに見られているような気がするんだよな」
「何、何?今流行りの『ストーカー』ってやつ?」
「さぁ?俺の気のせいかもしれないしな・・・」
「あんた、喧嘩ばっかしてるから誰かから狙われているんじゃなーい?」

まぁ狙われているのは間違ってないんだが

「俺に喧嘩売ってくる奴は二度とはむかわないように徹底的にやるからそんな事はないと思うんだが」
「あんたねぇ・・・」
「それよりもお前が付けまとわれているんじゃねぇのか?」
「そーねぇ、もしかしたらそうかも」
「ぉぃぉぃ、お気楽だなぁ」
「あーら、達郎が守ってくれるんでしょ?」
「・・・ん、まぁそうだけどよ」
「頼りにしてるゾ」
「・・・・・おお」

まぁ、気のせいかも知れないしストーカー野郎なら俺が即効絞め挙げればいいだけの事か
その話はとりあえずそれで終わらせ再び歩き出す。

しばらくして人気の少ない路地街に入る。視線はやはり感じていた。





視線が殺気に変わった。しかも強烈なやつ。これは・・・

「頼子」
「ん?なーに」
「ちょっと先行ってろ」
「何よ。やっぱり喧嘩のお礼参りだったの?」
「まぁそんなもんだ。すぐに終わるから先に行ってろ」
「えー!そんなのほっときなさいよ」
「ダメだ!」

鋭い眼差しで頼子を見る。

「・・・・分かったわ。あんまり無理しないようにネ。出来れば喧嘩もしないで」

俺の心情を察してくれたようだ。

「りょーかいりょーかい」
「じゃぁ駅前でまってるから」












「さて・・・・いつもいつも、飽きもせず襲ってきやがって・・・・即効ぶっつぶしてやるから出て来い!」

俺の咆哮に反応したのか壁から人影が現れる。羽根の生えた人影が・・・

「ほぉ。そうやって壁に隠れていたわけだ・・・」

異形なる者たち・・・今夜も天使がその姿を現した。







なまにえの呪文:
二週間あまりでのBパートアップです。
このスピード更新はやはり4月末に導入したハンドベルタイプのCEマシン「jornada720」のおかげです。ノートPCと違って1秒で起動するし、大きさもうちポケットにすっぽり入るサイズなので冗談抜きで「いつでもどこでも」書けます。
あとはこの第七話がある意味山場であり自分が書きたくてしょうがなかった場面だったからかもしれません。シーンは次から次へと沸いてきます。あとはそれを表現できる文章力が・・・激しく欲しいところです。
ちょっと意味深なセリフがいくつか出てきていますが良くある「話を盛り上げるネタ」ですのでもうちっとお待ちください。ネタばれはCパートであらかたやりますので。
あとCパートに関しては「生贄β」での掲載は行なわない予定です。つまりそれだけ重要なパートということで・・・お楽しみに〜。

Writing finish 2001/06/23