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バスタ小説「生贄」第七話「 」C-Part
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暗闇。いや、闇の中に青く丸い光とそれに照らされた二人の男性が見える。
二人は光の中に映った映像を沈黙したままじっ と眺めていた。

「はじめたようだな」

まず口を開いた男は20代前半だろうか。つり上がった眉毛が印象的だ

「本当に貴様の言うとおりにして大丈夫なのか?折角の生贄を無駄にされてはかなわん」

今度は50前後の眼鏡を掛けた一見紳士を思わせる男が口を開いた。

「そんな事にはならねぇよ。」

確信をもった口調で即答する

「それなら良いのだが・・・・ところで」
「ん?何だ?」
「『奴ら』も既にこの事に気付いているのではないか?」
「当然気付いているだろうな」
「でわ・・・」
「大丈夫だ。あいつらは気づいていても、全てを分かっていても何も出来ねぇ。『コマ』が揃わなければ何もはじまらねぇからな。揃い終わるまでは出したくても出せないさ。クククク・・・それがどんな悲劇を生むとしてもな」

暗闇の中男の嘲笑が響き渡った。
その姿を紳士は静かに見つめる。
若い男はしばらく笑いつづけた後、再び映像を見始める。

「しかしお前も疑い深いというか心配性だな」
「当然だ、これに我々がどれだけの時間と金と労力を投入していると思う。ここまで来てミスは許されない。それに『貴様等』を全面的に信用しろと言う方が無理があるのではないかね?」
「フッ・・・・それもそうだな。しかしな、『契約』をした以上よほどの事が無い限り裏切りは無ぇ。『契約』の拘束力はお前たちが思っている以上に強い。『お前達』の様にホイホイ破れる様な薄っぺらいものではないのさ。」

明らかな侮蔑を言葉に込めて返答をする。

「フン・・・まぁよい。さて、決まっていてもどう結論づくか・・・見てみようではないか」

暗闇は再び沈黙に支配された







1・・2・・3・・4・・・・・・・・・・・・・10・・11・・12

12体、今回は異常に数が多い。大抵1,2体、多くても4体がせいぜいだっただけにかなり厄介だ。

「・・・ったくよ。人のヴァカンスを団体さんで妨害ってか?いいぜ、殺ってやるよ」

そう言いながら左腕に『盾』を展開し、右手に『断罪の剣』を光の大剣に姿を変えて構える。
俺の殺気に反応したのだろうか、天使どもは俺中心に円形の陣、つまり俺を囲む。

「ハハハ、集団でリンチってか?天使って奴も意外とエグイな・・・・さっさと来な」

なぜだろうか。今日は妙にテンションが高い。疲れなのか、それとも朝から感じる「嫌な違和感」なのか・・・そんな事はどうでも良い。今はこのテンションのおかげで全く負ける気がしない。だって、ホラ・・・・

「後ろ!」

剣を振り上げるモーションを取りながら振りかえる。そこには腕を振り上げ今にも襲いかかりそうな天使の姿があった。

BASH!

振り上げた剣はそのまま斜め上への軌道を描きながら天使の肉体を袈裟斬る。

!!!!!!!!

断末魔を挙げる暇も無く原子へと帰化していく。

「まず一体!」






上空3000m

月の明かりに照らされた二つの人とおぼしき影が見える。白き翼が確認できる所から彼等も天使なのだろうか。
しかしその端正な顔立ち、均整のとれた身体、何よりその身体から発せられる威圧感は他の天使とは明らかに異なっていた。一人は女性と見まがうような長身の男性、もう一人は少し尖った目が印象的な褐色の少女。

「はじまったようですね」

3000m下の様子が見えているのだろう。男の方が先に口を開く。

「あぁ・・・・」

続いて少女がうつろな表情を見せながら曖昧な返答をする。


「いいのですか?」

彼女のその姿に声を掛ける男。

・・・・・・・・

その問いに対し少女は無言で返す。

「それで、いいのですか?」

もう一度、問い掛ける。

「・・・いいのだ。『時が動き出すまでは一切の干渉はならぬ』これが我らが父の御言葉。私たちはそれに従うのみ。それ以上でもそれ以下でもない」

少女はうつろな表情のままだったが今度は言葉を返した。

「確かに貴女の言う事はもっともです。ですが、貴女自身はそれでいいのですか?」
「それは・・・・・」

その言葉に動揺が走る。

「それは?」
「・・・・いや、何でも無い・・・その事は・・・・もう言わないでくれ・・・・・・・たのむ・・から」
「・・・分かりました。もう何も言いません・・・」

男はそれだけ言うと眼下に行われている光景を再び見始める。
対象的に少女は遠く空を仰ぐように上を向くと、男にも聞えないような小さな呟きを漏らた。




・・・あなたなら、このようなときにどうなされるのですか?・・・






「8体目!」

天使の首を跳ね飛ばしながら叫ぶ。戦闘開始からどのくらい経過しただろう。いくら弱いとは言えやはり多勢に無勢こちらもあちらこちらに傷が出来ている。しかし、俺の圧倒的優位には変わりは無かった。

Uhiiiiiiiiiiiiiiiiiiii!!

次・・・9体目の天使が間髪いれずに左手上空から襲いかかる。タイミングとしては剣の予備動作より早い・・・が。

「甘い!」

即座に盾の中心軸を左手の甲に移動させそのまま天使の胸部に叩きつけ攻撃を妨げる。

「食われろ!」

次の瞬間3つのカタパルトが天使に絡みつき胸部の回りに光の球体を形成する。
2,3秒経過した所で光の球体は消えカタパルトは再び『盾』形態へと姿を戻す。
天使の方はどうか・・・光に包まれていたそこは空洞・・・『食われて』いた。

YYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!!!・・・・・・・・・・・・・・・・−−−−−−−−−−

次・・・・

目の前を見るとそこにはエンジェルがコンバインドした姿「アークエンジェル」があった。

「そうそう、そうでもしないとお前らには勝機はない・・・もっともなったところで同じところだが。」

俺は天使を挑発するように人差し指と中指をあわせてクイクイと曲げる動作をする。

Hu-----------Fu------------Ryu---------

獣を思わせる息使い。『天使』と呼ぶにはあまりにもかけ離れた現実。だが、そんな事はどうでもいい。

Ja!

ただ、俺は・・・

Gin

俺の邪魔をするものを全て蹴散らし・・・

Gyan

唯生き残るだけ・・・

Zaku

あいつを守るために・・・

核に剣を付き刺さられた天使は無表情のまま消え去っていく。

「ふぅ・・・これで11体。残る一体、お前だけだぜ」

崩れ去った天使のその後ろに立っている天使に向かって叫ぶ。言葉を理解しているかどうかは定かではあるが。

・・・・・

当の天使は無反応のままたたずむ。

「なんだ?戦意焼失か?いいぜ、別にむやみに殺る気はこっちには無いし。逃げたきゃ逃げな」

・・・・・・・

「反応無しか・・・まぁいいや、じゃぁこれで終わりと言う事で俺は帰るぜ」

俺は剣と盾を収納する。それにも反応しない天使。完全に戦意を喪失したのだろうか。

「んじゃ、俺帰らせてもらうわ」

俺は天使に背を向け歩き出す。そう分かっている、奴は戦意を喪失しているわけじゃぁ無い。多分次の瞬間に

Uiiiiiii!

突如目の前に現れる天使。左腕は大きく振り上げられこれから俺を殴りつけるというのは見え見えだ。

「予想通りだな、おい」

即座に『盾』を展開、防御に入る。これで盾にインパクトした瞬間に「食らって」やれば終わりだ。

Gyaaaaaaann

インパクト!今だ




「甘いですね」




え?

次の瞬間目の前で信じられない映像が映る。いままで完全なる防御を誇っていた『盾』が極端な湾曲を見せた後・・・・砕けた。そしてそのまま



「ゲ、ゲホォォ」



腹から背中に掛けて突き抜けるような衝撃。直撃だ。目の前が揺らぎだす。
それでも当てられた腕をつかもうと目線を下に移した。




????





おかしい、奴の拳が見えない。俺の腹のすぐそばに奴の肘が見える。




!!!!




血。おびただしい量の血。奴の血か?いや・・・・・・・俺の血だ。奴の腕は俺の身体を突き抜けていやがる





「ウワァァァァァァアア!」





状況を理解した瞬間激痛が俺を襲ってくる。だがこの激痛の中、俺の意識は飛ばない。

「こんなものが本当に効くとでも思っていたのですか?愚か、愚か実に愚かだ。エンジェルごときの『蟻』には効いたかも知れませんが私にそんなモノが通用するわけが無いでしょう」

突如その天使は流暢にしゃべりだした。いや、それどころか天使の象徴とも言える白き身体が卵の殻が砕けたように崩れていきそこには全く逆のどす黒い男の身体が姿を見せる。

「それとも『天使』であるという事に油断でもしたのでしょうか?とすればあの者どもの魔道具も少しは役に立ったと言うことですか。」

視界が大きく揺らぎだす。男の姿もぼやけはじめる。

「お、お前は」

それでも何とか声は出す事が出来た。

「おやおや、全く状況を理解できていなさそうですね。そうですねぇ、折角ですから貴方が貴方で無くなる前に教えて差し上げましょう・・・・・私は」

男はニヤリと明らかに卑下た笑みを浮かべる。

「天使とは対をなすモノ・・・つまり『悪魔』ですよ。」

な・・・・・・

「これで疑問もすっきり解決、思い残す事はないでしょう。ではグッドナ〜イト。いや『アナタ』には『さようなら』でしょう・・・か?」

一方的に結論付ける。そしてそれだけ言うと、この悪魔は俺の腹に付き刺さっている左腕を遠慮無しに抜きさった。

ビチャ

「グ・・・・ゲホッ」

栓の抜けたビンのように腕が抜けた腹から大量の血が滴り落ちる。
さらなる大量の出血と増幅した激痛の為、おれは前にそのまま倒れこんだ。

「いくら貴方が強力な『核』を持っていてもその『外郭』では再生もままならないようですねぇ。当然そうで無いと困るんですけれど・・・オヤ・・・・これはこれは。良いものを見つけてしまいました」

良いもの?・・・・な、なんだ。
力を振り絞り後ろを見る。視界のその先には

「よ、頼子!」

そこにはあまりにも遅いので心配で見にきたのだろう。頼子がぼーぜんとたちすくんでいた。最悪のタイミングだ。

「え?え?え?」

頼子この状況を把握できず軽いパニックにかかっている。

「うーん、美しいお嬢さんですね。きっと魂も極上なんでしょう。軽い運動のあとのいっぱいの魂。最高ですねェ」
「や、やめろ」
「おや、彼女は貴方の良い人ですか。それは好都合、絶望と憎悪の淵に苛まれなさい。」

そう言うと奴は頼子に近づいている。

く、ちくしょう!

だめだ、既に全身が麻痺している。
思考するのすら既にかろうじての状態。このままただ頼子が殺されるのを黙ってみているしか無いのか。それだけは駄目だ。


−−−−−力を使うか?

なに?誰かが頭の中に直接話し掛けてくる

−−−−−封印されし力、使うか?

思い出した。一度だけあったことがある。『過剰エネルギーによる擬似意思』・・・こいつだ。

『使えるのか?』

−−−−−既に力を束縛するカセが崩壊している。今なら可能だ。

『なら、迷う事は無いさ』

−−−−−しかし、使う事によるリスクもある。

『リスク・・・あぁそう言う事か』

−−−−−そう言う事だ。それでも使うか?

『当然だ。今更惜しむものは無いさ』

−−−−−ならばお前の思うがままに・・・

もう一人の俺の声が聞えなくなり一呼吸置いた後、急に胸のあたりが熱くなる。
そしてその熱は大きく広がっていく。

『これが・・・力か・・・』

そこで俺の意識は途切れた。







ドクン

・・・嫌な予感だ・・・

研究所でサンプルの整理をしていたディータは突然、不安感に襲われた。

トュルルルルル

そのタイミングにあわせたように内線の呼び鈴が鳴り響く。

「なんだ?」
『ディータ博士、霊子レーダーに異常値が出ました。至急3番モニターを見てください』

内線相手の研究員の指示にしたがって、目の前にある3番モニターに目を移す。

「こ、これは」
『はい。これはつい一分前に発生した異常値の発生場所を衛星から霊子モニターで確認したものです』

そこには一瞬小さく輝いた点の光が次の瞬間一気に拡大し、そして静かに拡散する映像だった。その間約40秒。左上に表示されているエネルギー値は非常識と言える値を出している。彼女の知る限り唯一人を除いては

「達郎か!」
『はい、上座達郎のものです。』

達郎には秘密にしていたが衛星を利用して常に監視をしている。

「で、その後はどうだ」
『そ、それがその後上座達郎をロストしてしまいまして・・・いまサーチ中です』

見失う・・・それは考えにくい。彼のもつソレは特異なものだ。見失う方が難しいぐらいだ。

『・・・発見しました。ですが・・・かなり微弱です。通常の100分の1以下!』

再び異常な数値にディータは驚く。それではまるで・・・

「むぅ、これはまずいかもしれませんねぇ」

ディータが振るかえるといつのまにかアビゲイルがモニターを覗きこんでいた。

「まずいとは?」
「あなたも分かっていらっしゃるでしょ?上座達郎の身に何か起きたと言う事ですよ」

真っ青になるディータ。そして即座に電話を掛ける。もちろん達郎のケータイにだ。

「・・・・現在その番号はスイッチが切られているか、おはなし・・・・」

ガチャン!

「緊急対応レベルAだ!至急現場へ向かう!ヘリを用意しろ!出る」
「私はどうしますか?」
「アビゲイル、こちらに残ってもしものときの準備を頼む」
「分かりました・・・」

杞憂に終わってくれ・・・ディータはそう願いながら部屋を後にした。






ん・・・・光を感じる・・・俺は・・・あぁ・・・『力』を開放して・・・精神がいかれ・・・た・・・はず・・・助かったの・・・か・・・い・・・や・・・腕・・・や脚・・・の感覚・・・はない・・・視覚のみ・・・が、かろう・・・じて・・・動いている・・・よう・・だ



たつろう!



い・・・いち・・おう・・・聴覚もまだ持っている・・・だ、だれ・・・の・・・こ・・・え・・・しゃ・・・しゃべる・・・か?

「よ・・・よんだか?」
「達郎!」

あぁ・・・視界がはっきり・・・して・・・き・・・た。よ・・・りこ・・・?た、たすか・・・ったん・・だな

「なに、な・・・いてんだよ。か・・・顔が・・・くしゃく・・・しゃ・・・になっちまって」
「だって・・・だって・・・達郎が血だらけで全然とまんなくて・・・呼んでも返事無くて・・・」
「だ・・・だいじょうぶだ・・・って・・・い・・・いっただろ?お前を・・・ま・・・まもるって・・・」
「そうだよ。ずっと私を守ってよ・・・だから・・・だから・・・」

あ・・・意識が遠くなりだした・・・そろそろ・・・か・・・

「な・・・なぁ・・・よ・・・りこ・・・」
「な、なに?」
「ずっと・・・なにが・・あ・・・っても・・・おま・・えを愛して・・・る・・・」

もう・・・頼子の顔は見えない・・

「ぜ・・・ったい・・・・・・・・・・・・・・」

もうなにも聞えない・・・・・・

「・・・・・・に・・・・・・・・」

もう・・・・何も感じない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





















生贄第7話







「シ」
















「イヤァ――――――――――――――――――――――!!!」


Writing finish 2001/06/30